法規. 用語解説

移動する局と移動しない局

○ 「移動する局」と「移動しない局」の違いについて

 アマチュア無線局はその局の最大出力が50Wを超えると、移動して運用できなくなります。これは、送信機単位ではなく、無線局単位での制限です。そのため、免許が移動しない局になっている場合、たとえハンディー機を持っていたとしても免許状に書かれている設置場所から移動して運用することはできません。移動して運用する場合は別に50W以下の「移動する局」の免許が必要です。この場合の「移動する局」は同一呼出符号、違う免許番号になります。「移動する局」と「移動しない局」間の設備共用はできません。


 50W以下の局は一般的に「移動する局」であり、常置場所での常時運用も含まれます。

○ 「移動する局」と「移動しない局」の見分け方

 「移動しない局」は免許状の移動範囲欄が空欄になっています。

 「移動する局」は免許状の移動範囲欄に「陸上、海上及び上空」等の文字が入っています。

識別信号

 識別信号は、無線局を識別するための、他と重複しない個別の符号(文字列)です。アマチュア無線局では通常、「コールサイン」と呼ばれています。


 電波法令では、識別信号の定義を、呼出符号(標識符号を含む。)、呼出名称、船舶局選択呼出番号及び海岸局識別番号などとしています(電波法第8条、電波法施行規則第6条の5)

高調波・低調波・寄生発射

○ 送信機側の原因


  • (1) 高調波が発射されている場合
  •  アマチュア無線が発射する電波の高調波がテレビの放送やラジオ放送の周波数と一致する場合は、電波障害の原因となります。例えば、21.0 ~ 21.45〔MHz〕のバンド内から発射される電波の第4 高調波は、FM 放送帯の 84〔MHz〕~ 85.8〔MHz〕の周波数が該当しますから、その範囲の中に地域のFM 放送があると、それに混信を与えることになります。同じように、28.0 ~ 29.7〔MHz〕 のバンド内から発射される電波の第3 高調波は、84 ~89.1〔MHz〕となりますから、注意が必要です。
     145〔MHz〕帯においても同様で、145〔MHz〕~ 146〔MHz〕のバンド内の周波数の第4 高調波が576〔MHz〕~ 584〔MHz〕となりますから、それが地上波テレビ放送の周波数と一致します。(物理チャンネルの30 ~ 31 チャンネル)
     このように、アマチュア無線に許可されている周波数の高調波に当たる周波数に放送局があると、放送受信に混信を与える可能性があります。


  • (2) 低調波が発射されている場合
  •  本来、発射周波数の整数分の1 といった低調波成分が障害波となることはなく、送信機の原発振周波数とか、逓倍前の周波数が送信機より漏れてでた場合がこれに該当します。
     したがって、障害を受ける側の周波数の整数分の1 の周波数が送信機の逓倍段の周波数と一致している場合は注意が必要です。


  • (3) 寄生発射がある場合
  •  送信機自身が、全く予期しない周波数で自己発振(寄生発振)を起こしているときなど、その周波数が本来放射されているアマチュア・バンドの周波数に隠れて放射されている場合、その周波数がラジオ放送やテレビ放送の周波数と一致していると電波障害が起きる原因となります。
     寄生発射は、発射する周波数の高調波でも低調波でもない全く関係のない周波数で起こるため、認知することがむずかしい現象です。


  • (4) その他の不要電波の放射がある場合
  •  高調波、低調波、寄生発射などは、アンテナとフィーダーとの放射インピーダンスの不一致、接触不良、オーバーパワーによる経路の発熱などによる異常放射が原因となって、障害が出ることがあります。
     異常放射には、マイクコード、電源コード、通信機の筐体や、近接の金属からもれ電波の放射として考えられ、通信機の周辺の構築には十分な配慮が必要となります。


周波数測定装置

○ 周波数測定装置


 周波数測定装置は、無線局においては、主として周波数の偏差が許容値内にあるかどうかを測定するために使用されます。

 アマチュア局の送信設備には、その誤差が使用周波数の許容偏差の二分の一以下である周波数測定装置を備えつけなければなりません。

 アマチュア局に許可された周波数1.9MHz帯から24MHz帯において、空中線電力が10Wを超える場合には、周波数の許容偏差が0.025%以内である周波数測定装置が必要となりますが、これは、海外から発射されている10MHzの標準電波「WWVH(ハワイ)」などを受信し、無線機の基準周波数を較正することができ、この機能により周波数測定装置の備えつけの条件を満たすことができます。

 (参考)0.025%とは、10MHzの周波数において、その誤差は2.5kHzとなります。

秘話装置

○ 秘話装置


 秘話装置とは、音声通信において盗聴や傍受を防止するために音声を聞き取れなくするものである。よく知られている方式は音声の周波数スペクトルを反転させるもので、初期の無線電話やアナログ方式のコードレスフォンなどで使われた。音声をデジタル化した後に暗号化を行う方式は携帯電話、警察無線や軍用無線、政府高官用の暗号化機能付き電話機などで使われている。
秘話装置は大きく分けてアナログ方式とデジタル方式の2種類の方式に分類できる。


 アマチュア局の場合、秘話装置の使用や暗号の使用等通信に秘匿性を与えることは禁止されている。これは、アマチュア無線周波数は、誰でもが使用できる共用の周波数であり、かつ、不特定多数の間の通信を目的としていることによる。

周波数帯の上端又は下端の付近で電波を発射する場合には、占有周波数帯幅がその境界をはみ出さないように注意が必要

 アマチュア無線局には、動作することが許容される周波数帯(アマチュアバンド)が決められています(下図の帯の部分)。

 一方、無線通信を行うには、使用する電波に一定の幅が必要です(例えば、教科書P88で解説しているDSB無線電話装置では、上側帯波、搬送波及び下側帯波を併せて6kHzの幅を持ちます。)

 許容されたアマチュアバンドの上端で運用する場合は、上側波帯の端がバンドの上限を超えないように、また、下端で運用する場合は、下側帯波がバンドの下限を超えないように注意する必要があります。


例:144MHz帯の場合

下図は説明を分かりやすくするために、「周波数の使用区別」に関わらず作成しています。実際は、総務省が告示した「周波数の使用区別」に従って運用してください。


Q符号

○ 主要なQ符号

(注) Q符号を問いの意義に使用するときは,Q符号の次に問符をつけなければならない。


Q符号 意義
問い 答え又は通知
QRA 貴局名は、何ですか。 当局名は、……です。
QRH こちらの周波数は,変化しますか。 そちらの周波数は,変化します。
QRK こちらの信号(又は……(名称又は呼出符号)の信号)の明りよう度は,どうですか。 そちらの信号(又は……(名称又は呼出符号)の信号)の明りよう度は,
1 悪いです。
2 かなり悪いです。
3 かなり良いです。
4 良いです。
5 非常に良いです。
QRL そちらは,通信中ですか。 こちらは,通信中です(又はこちらは,……(名称又は呼出符号)と通信中です。)。妨害しないでください。
QRM こちらの伝送は,混信を受けていますか。 そちらの伝送は,
1 混信を受けていません。
2 少し混信を受けています。
3 かなり混信を受けています。
4 強い混信を受けています。
5 非常に強い混信を受けています。
QRN そちらは,空電に妨げられていますか。 こちらは,
1 空電に妨げられていません。
2 少し空電に妨げられています。
3 かなり空電に妨げられています。
4 強い空電に妨げられています。
5 非常に強い空電に妨げられています。
QRO こちらは,送信機の電力を増加しましようか。 送信機の電力を増加してください。
QRP こちらは,送信機の電力を減少しましようか。 送信機の電力を減少してください。
QRQ こちらは,もつと速く送信しましようか。 もつと速く送信してください(1分間に……語)。
QRR そちらは,自動機使用の用意ができましたか。 こちらは,自動機使用の用意ができました。1分間に……語の速度で送信してください。
QRS こちらは,もっとおそく送信しましようか。 もっとおそく送信してください(1分間に……語)。
QRT こちらは,送信を中止しましようか。 送信を中止してください。
QRU そちらは,こちらへ伝送するものがありますか。 こちらは,そちらへ伝送するものはありません。
QRV そちらは,用意ができましたか。 こちらは,用意ができました。
QRW こちらは,……に,そちらが……kHz(又はMHz)で彼を呼んでいることを通知しましようか。 ……に,こちらが……kHz(又はMHz)で彼を呼んでいることを通知してください。
QRX そちらは,何時に再びこちらを呼びますか。 こちらは,……時に(……kHz(又はMHz)で)再びそちらを呼びます。
QRZ 誰がこちらを呼んでいますか。 そちらは,……から(……kHz(又はMHz)で)呼ばれています。
QSA こちらの信号(又は……(名称又は呼出符号)の信号)の強さは,どうですか。 そちらの信号(又は……(名称又は呼出符号)の信号)の強さは,
1 ほとんど感じません。
2 弱いです。
3 かなり強いです。
4 強いです。
5 非常に強いです。
QSB こちらの信号には,フェージングがありますか。 そちらの信号には,フェージングがあります。
QSL そちらは,受信証を送ることができますか。 こちらは,受信証を送ります。
QSO そちらは,……(名称又は呼出符号)と直接(又は中継で)通信することができますか。 こちらは,……(名称又は呼出符号)と直接(又は……の中継で)通信することができます。
QSP そちらは,無料で……(名称又は呼出符号)へ中継してくれませんか。 こちらは,無料で……(名称又は呼出符号)へ中継しましよう。
QSU こちらは,この周波数(又は……kHz(若しくはMHz))で(種別……の発射で)送信又は応答しましようか。 その周波数(又は……kHz(若しくはMHz))で(種別……の発射で)送信又は応答してください。
QSW そちらは,この周波数(又は……kHz(若しくはMHz))で(種別……の発射で)送信してくれませんか。 こちらは,この周波数(又は……kHz(若しくはMHz))で(種別……の発射で)送信しましよう。
QSX そちらは,……(名称又は呼出符号)を……kHz(又はMHz)で又は……の周波数帯若しくは……の通信路で聴取してくれませんか。 こちらは,……(名称又は呼出符号)を……kHz(又はMHz)で又は……の周波数帯若しくは……の通信路で聴取しています。
QSY こちらは,他の周波数に変更して伝送しましようか。 他の周波数(又は……kHz(若しくはMHz))に変更して伝送してください。
QTC そちらには,送信する電報が何通ありますか。 こちらには,そちら(又は……(名称又は呼出符号))への電報が……通あります。
QTH 緯度及び経度で示す(又は他の表示による。)そちらの位置は,何ですか。 こちらの位置は,緯度……,経度…(又は他の表示による。)です。

通報

 無線局運用規則等で使用される「通報」とは、相手に伝える内容を指します。

 一般的には、物事を(公的機関などに)告げ知らせる行為を指す場合が多いですが、電波法令では相手に伝える内容を指します。

擬似空中線回路

○ 擬似空中線回路



 実際のアンテナと等価の抵抗、インダクタンス及び容量を有する回路で、供給エネルギーを電波としてふく射せずに回路内で熱として消費するものである。実際のアンテナを使用しないで、電波を外部に出さず、他に混信妨害を与えずに試験を行うために使用する。小型のものは自然空冷であるが、大型のものになると強制空冷又は水冷式にして回路内の損失熱を取り去り、擬似空中線(Dummy Antenna)の焼損を防止するとともに回路定数を正しく保つようにしてある。

出典:一般財団法人情報通信振興会ホームページより

無線局免許状に記載された事項

※ 法規「第2章 アマチュア局の免許」の「2-4 無線局免許状の記載事項」を参照


○ 無線局免許状に記載された事項


・無線局免許状には、次の記載があります。


  • ①免許の年月日及び免許番号
  • ②免許人の氏名又は名称及び住所
  • ③無線局の種別
  • ④無線局の目的
  • ⑤通信の相手方及び通信事項
  • ⑥無線設備の設置(常置)場所
  • ⑦移動範囲
  • ⑧免許の有効期間
  • ⑨識別番号(呼出符号)
  • ⑩電波の型式及び周波数
  • ⑪空中線電力
  • ⑫運用許容時間

・電波の型式及び周波数等の指定事項や無線局の設置場所等については、変更には申請や届け出の手続きが必要です。また、免許年月日等については不変的ものであり変更はありません。


・したがって、訂正の対象となる例は、氏名や住所、行政表示変更による無線局の設置場所などとなります。


国際電気通信連合

○ 国際電気通信連合(ITU)の概要(International Telecommunication Union)


  • 1.設立の経緯
  •  国際電気通信連合(ITU)は、1865年パリで創設された万国電信連合と1906年ベルリンで創設された国際無線電信連合が1932年に合併した国際機関で、1947年に国連の専門機関となった。


  • 2.ITUの活動
    • (1)  ITUは主として以下の活動を行っており、電気通信(有線通信及び無線通信)の利用に係る国際的秩序の形成に貢献している。

      •  (ア) 放送や衛星通信等無線通信で使用される電波の国際的な分配及び混信防止のための国際的な調整
      •  (イ) 電話やファクシミリ、移動体通信、ハイビジョン等電気通信の世界的な標準化の促進
      •  (ウ) 開発途上国に対する技術援助の促進

    • (2)  ITUの活動には、民間企業や学術・工業団体等が参加して活躍しており、政府間機関としてはユニークな存在となっている。電気通信や電波がすべての国によって国際的に秩序正しく運用・利用されて今日のように発展してきたのは、ITUの活動によるところが大きい。

  • 3.ITUの組織
  •  ITUは全権委員会議(ITUの最高機関。4年ごとに開催され、ITU憲章・条約の改正、連合の活動方針の決定等を任務とする。)、理事会、無線通信部門、電気通信標準化部門、電気通信開発部門、世界国際電気通信会議、調整委員会、事務総局から構成される。
     ITUの加盟国(連合員)は193か国。事務総局の所在地はスイスのジュネーブ(事務総局長:ハマドゥーレ・トゥーレ(Hamadoun Toure)氏(マリ)、事務総局次長:ホーリーン・ジャオ(Houlin Zhao;趙厚麟)氏(中国))である。なお、事務総局長及び事務総局次長は三選禁止。


    • (1)  我が国は、1879年にITUの前身である万国電信連合に加盟し、それ以来、ITUの管理・運営活動を通じて国際電気通信の分野で国際協力に努めてきた。

    • (2)  1994年には全権委員会議を招請。京都全権委員会議が1994年9月19日から10月14日まで国立京都国際会館(京都市)において開催された。
    • (3)  1998年に米国ミネアポリスで開催された全権委員会議において、内海善雄 郵政大臣官房審議官(当時)がITU事務総局長に選出され、1999年から2006年12月まで2期8年間務めた。また、我が国は1959年以降、継続して理事国に選出されている。
    • (4)  我が国の2013年の分担金は、9,540千スイスフラン(加盟国全体の分担金の8.8%)。職員数は約820名で、そのうち邦人職員(専門職以上)は6名(2013年7月1日現在)。
出典:外務省ホームページより

主管庁

 無線通信にかかる日本の主管庁は、総務省です。

GMT

 GMTは、経度0度を基準とした平均太陽時のことで、イギリスのグリニッジ天文台が経度0度にあることから、グリニッジ平均時と呼ばれています。

 現在の世界の標準時は、協定世界時 (UTC) となっていいますが、以前はグリニッジ平均時が用いられていました。両者は、ほぼ同一の時刻を指しますが、前者は秒を基準に算出するのに対し、後者は太陽の位置を基準に算出するもので、算出の考え方が異なります。

 日本で使用されているのは、日本標準時(JST)といい、UTCプラス9時間となっています。

無線航行業務

○ 無線航行業務


 「無線航行のための無線測位業務をいう。」(電波法施行規則第3条1項第10号)


 航行中の船舶又は航空機の位置又は方向の決定及び障害物の探知の業務であり、無線標識業務もこれに含まれる。船舶のためのものを海上無線航行業務、航空機のためのものを航空無線航行業務という。レーダ、デッカ、ロラン、無線標識局のほか、航空無線航行業務ではVOR、DME、TACAN、ILSなどが使用されている。


出典:一般財団法人情報通信振興会ホームページより

国際呼出符字列分配表

 国際電気通信連合が、世界各国の呼出符号(識別信号)の重複が起きないよう、国ごとに呼出符号の先頭に使用する文字列(国際呼出符字列)を分配しています。

 日本には、JA~JS、7J~7N、8J~8Nが分配されており、アマチュア無線局のコールサインの先頭に使用されています(例、JA1・・・、7N1・・・など)